2015年9月1日からの約3週間、東京から長野県木曽郡南木曽町に移り住んだ地域おこし協力隊・伊藤恵理さんが企画した「南木曽アーティスト・イン・レジデンス」(以下NAIRと記す)が行われました。NAIRとは、20代から30代の若手作家4人を南木曽町に滞在させ、1998年に廃校になった旧妻籠小学校を拠点に作品制作・発表を行ってもらう内容のアート活動であり、私、宮内もアーティストの1人として招待され参加させていただきました。このNAIRの活動こそが、今回私が自らアートイベントを企画したい!と思うきっかけとなった活動でした。
私は予備校、大学、大学院と美術を学び、卒業後も美術と向き合う中で、自分の活動がアーティスト仲間やアート関係者からの理解は得られても、それを除いた周囲、例えば一番身近な家族からも「芸術は難しい」と捉えられてきたこと。また、学生時代ヨーロッパへ多く旅行した経験から、日本ではアートが諸外国ほど生活の中に溶け込んでおらず、美術館やギャラリーに足を運ぶ人はごく一部の人間に限られていること。その他の大多数の方からは、特殊なものとして捉えられがちだという印象を受けておりました。加えて、アーティストにとって制作活動は孤独と闘う作業でもあり、制作中は周りの人間との関わり合いが持ちにくくなること。作品を生み出す楽しさへ行 き着くまで水面下でひたすらもがきながら、自分の内面と向き合う厳しい時間となること。「 作品制作=精神修行」そんな言葉がぴったりだと感じることもありました。
しかし、そんな気持ちを変えてくれたのが南木曽町でのAIRの活動でした。同じ立場のアーティスト同士、作る作品は違えど苦労や喜びを分かち合いながら制作できたことが、アーティスト4人にとって日常にはない貴重な経験となったのです。さらに、アーティストとしての立場が、町おこしのため、多くの人のため、いちサポーターとしての役割を担えたことが、私だけでなく、参加アーティスト全員の気持ちに大きな変化をもたらしました。
その理由にNAIRが最初から最後まで人と人とのかかわり合いの中での行われた活動であったことが上げられます。滞在期間中、町の方のご厚意でホームステイをさせていただいたり、役場の方からも多くの協力を得ることができ、温かい支えの中で安心して制作に打ち込むことができました。そしてそんな私たちアーティストの姿を見た町の人たちが「若い子たちが私たちの土地に来て、なにかを一生懸命やっている。それじゃあ、応援してあげよう」 そんな後押しを日に日に強く感じられるようになっていったのです。
私が活動の中で最も強く感じたことは、地域の人たちはそもそもアート自体に大きな期待や意味合いを持ってないということ。とりおこなっている私たちの真剣な気持ちが少しずつ伝播した結果、皆がアートにも興味を持ってくれたのです。理解されにくいことをするからには、広く理解してもらうための環境作りが必要なのだと身を持って感じた瞬間でした。そこで、子どもたちを対象としたワークショップを実施するなど、自分たちで地域の方との交流の場を増やしていくことにしました。老若男女、多くの方と話をし、その輪が少しずつ大きく広がっていきました。
町の人への恩返しの意味も込め、アーティストたちは自分たちが得意とする芸術の分野で、町や人のために何が出来るかを真剣に考え、それを作品という形で発信しました。その結果、僻地とも言える山の中の廃校の校舎に、最終日2日間で行われた展覧会で来場者数が約450名を超え、地域おこしという意味でも偉業を成し遂げることができたのです。
さらに普段は活用されておらず、建て壊しが決定している旧妻籠小学校という場を会場にしたことにも大きな意義がありました。小学校という空間へのノスタルジーは少なからず誰もが持っている感覚であり、アーティスト4人は建物の力に魅了され、この空間で作品を作りたい!と素直にインスピレーションが湧き、そこでしか作れない作品を生み出すことができました。こんな素晴らしい校舎がなくなってはもったいない。外から町を見た人間だからわかる魅力を町の人たちに伝えたい。そんな思いでオープンスタジオと展覧会の来場者にアンケートを実施すると、建て壊しを反対する意見を数多くいただきました。来年以降も活動を続けて行く為、校舎を存続させるための活動の第一歩を歩むことが できたと考えています。
NAIRが地域の活性化、若手アーティストの支援という2つの役割において成功事例となったことで、私自身、やっぱりアートって、すごい力を持っているんだ!そう再確認することができました。そして、このようなAIRを全国に広める活動がしたい。その気持ちがアートイベントを企画する立場へと導いてくれました。
現在、アーティスト・イン・レジデンス制度は国内でも広がりをみせているものの、まだまだその数は少なく、参加できるアーティストは限られているのが現状です。そのハードルを下げ、間口を広げたい。南木曽町から東京へ戻り、NAIRの経験を生かして自分に出来ることは何かを考えた時、1人でも多くのアーティストに地域とのかかわり合いの中で、アートの役割を考えながら制作をする楽しさを味わってほしい。できるなら、日本のアート界に新しい風を吹き込みたい。そんな気持ちが、今の私の原動力となっています。
私は予備校、大学、大学院と美術を学び、卒業後も美術と向き合う中で、自分の活動がアーティスト仲間やアート関係者からの理解は得られても、それを除いた周囲、例えば一番身近な家族からも「芸術は難しい」と捉えられてきたこと。また、学生時代ヨーロッパへ多く旅行した経験から、日本ではアートが諸外国ほど生活の中に溶け込んでおらず、美術館やギャラリーに足を運ぶ人はごく一部の人間に限られていること。その他の大多数の方からは、特殊なものとして捉えられがちだという印象を受けておりました。加えて、アーティストにとって制作活動は孤独と闘う作業でもあり、制作中は周りの人間との関わり合いが持ちにくくなること。作品を生み出す楽しさへ行 き着くまで水面下でひたすらもがきながら、自分の内面と向き合う厳しい時間となること。「 作品制作=精神修行」そんな言葉がぴったりだと感じることもありました。
しかし、そんな気持ちを変えてくれたのが南木曽町でのAIRの活動でした。同じ立場のアーティスト同士、作る作品は違えど苦労や喜びを分かち合いながら制作できたことが、アーティスト4人にとって日常にはない貴重な経験となったのです。さらに、アーティストとしての立場が、町おこしのため、多くの人のため、いちサポーターとしての役割を担えたことが、私だけでなく、参加アーティスト全員の気持ちに大きな変化をもたらしました。
その理由にNAIRが最初から最後まで人と人とのかかわり合いの中での行われた活動であったことが上げられます。滞在期間中、町の方のご厚意でホームステイをさせていただいたり、役場の方からも多くの協力を得ることができ、温かい支えの中で安心して制作に打ち込むことができました。そしてそんな私たちアーティストの姿を見た町の人たちが「若い子たちが私たちの土地に来て、なにかを一生懸命やっている。それじゃあ、応援してあげよう」 そんな後押しを日に日に強く感じられるようになっていったのです。
私が活動の中で最も強く感じたことは、地域の人たちはそもそもアート自体に大きな期待や意味合いを持ってないということ。とりおこなっている私たちの真剣な気持ちが少しずつ伝播した結果、皆がアートにも興味を持ってくれたのです。理解されにくいことをするからには、広く理解してもらうための環境作りが必要なのだと身を持って感じた瞬間でした。そこで、子どもたちを対象としたワークショップを実施するなど、自分たちで地域の方との交流の場を増やしていくことにしました。老若男女、多くの方と話をし、その輪が少しずつ大きく広がっていきました。
町の人への恩返しの意味も込め、アーティストたちは自分たちが得意とする芸術の分野で、町や人のために何が出来るかを真剣に考え、それを作品という形で発信しました。その結果、僻地とも言える山の中の廃校の校舎に、最終日2日間で行われた展覧会で来場者数が約450名を超え、地域おこしという意味でも偉業を成し遂げることができたのです。
さらに普段は活用されておらず、建て壊しが決定している旧妻籠小学校という場を会場にしたことにも大きな意義がありました。小学校という空間へのノスタルジーは少なからず誰もが持っている感覚であり、アーティスト4人は建物の力に魅了され、この空間で作品を作りたい!と素直にインスピレーションが湧き、そこでしか作れない作品を生み出すことができました。こんな素晴らしい校舎がなくなってはもったいない。外から町を見た人間だからわかる魅力を町の人たちに伝えたい。そんな思いでオープンスタジオと展覧会の来場者にアンケートを実施すると、建て壊しを反対する意見を数多くいただきました。来年以降も活動を続けて行く為、校舎を存続させるための活動の第一歩を歩むことが できたと考えています。
NAIRが地域の活性化、若手アーティストの支援という2つの役割において成功事例となったことで、私自身、やっぱりアートって、すごい力を持っているんだ!そう再確認することができました。そして、このようなAIRを全国に広める活動がしたい。その気持ちがアートイベントを企画する立場へと導いてくれました。
現在、アーティスト・イン・レジデンス制度は国内でも広がりをみせているものの、まだまだその数は少なく、参加できるアーティストは限られているのが現状です。そのハードルを下げ、間口を広げたい。南木曽町から東京へ戻り、NAIRの経験を生かして自分に出来ることは何かを考えた時、1人でも多くのアーティストに地域とのかかわり合いの中で、アートの役割を考えながら制作をする楽しさを味わってほしい。できるなら、日本のアート界に新しい風を吹き込みたい。そんな気持ちが、今の私の原動力となっています。
written by Aya Miyauchi
参考:NAIR特集記事
中日新聞2015年9月19日掲載
中日新聞2015年9月19日掲載
信濃毎日新聞2015年9月21日掲載
松本平タウン情報2015年10月3日掲載